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特性5因子〜自分らしく生きるということ(1/2)

photo by  Shanon Wise

※この記事は、性格診断の関連記事↓です。

 

ここまで、科学的確証の得られた数々の証拠から考察し、導き出された結論はこうです。

・人の性格(パーソナリティー)には5つの次元が存在する。
・それぞれの次元のどこに位置するかによって、その人の性格が決まる。
・関心、仕事、対人関係、恋愛、さらに健康について起こることの多くは、これらによって方向付けられる。
・人がどのレベルに位置するのかを決める決定要素は、第一に遺伝子であり、第二に人生初期に受けたさまざまな(予測不明な)影響による。
・性格を思い通りに変えることはできない。

それに対して、僕たちはどうすることもできず、どうやってもそれらを覆すことはできないようです。

このことは、主に2つの難しい問題を孕んでいます。

まず、「人としての成長を目指して努力するのは、無意味だというのか?」というものです。
大人が背を伸ばそうと必死になっても無意味なように、諦めるしかないのでしょうか。

それから2つめは責任の問題です。
変えることができないということは、変えられない人を責めることもできないということです。
例えば、犯罪を犯した人間が「やったのは私ではない。私の低い調和性のせいだ。ほとんど遺伝子によるものなんだ」と主張するのを、どうやって防いだらいいのでしょう。

特性5因子の締めくくりとして、これらの問題を取り上げていくことにします。

 

結論から言いますと、
成長するために努力する意味はありますし、しっかりと責任もあります。

 

このことを説明するには、心理学者ダン・マカダムズの理論に従うのが分かりやすいです。それは、ヒトの特徴や人生を形作る、三つの異なるレベルについてです。

第一のレベル→「特性5因子の様々なスコアレベル」

第二のレベル→「特徴的行動パターン」

第三のレベル→「パーソナル・ライフストーリー」

これら三つのレベルによって、僕たちの特徴、人生が形作られるという理論です。

 

では、 各レベルについて説明していきます。

第一のレベル「特性5因子のスコアレベル」については特性5因子の過去記事を読んで頂くとわかるかと思いますが、ほとんど変えることはできないもので、その人物の行動におおよその予測性を与えます。

 

そして第二のレベル、「特徴的行動パターン」

これは、特性5因子の結果から生じるものですが、
たとえ同じパーソナリティースコアを持っていても、行動が似ているのはあくまでパターンであって、全く同じ行動をとるわけではないということです。

例えば、外向性のスコアの高い人の中で、一人は北極探検家になり、一人はスカイダイビングに挑戦するかもしれません。さらにもう一人は、社会の中で活気あふれる人物になるかもしれません。

要するに、「外向性が高い」という、たった一つの特性にしても、多くの行動表現の手段があるということであり、どれを採用するかは、個人個人の歴史、出会い、チャンス、そして選択によるということなのです。

パターンは同一でも、その行動は違ってくるわけです。

 

そして第三のレベル、「パーソナル・ライフストーリー」というものは、「自分で、自分の人生をどう見るか?」というものです。

 例えば、あなたに今ほとんどお金が無いとして、これを欠陥と見るか、美徳ととるかは、かなりの程度まであなた次第です。

ある人は、お金を稼ぐ能力が無い自分を責めるかもしれません。そしてある人は、これは今後のために良い経験になると考えるかもしれません。そうやって、自分の人生の意味をさまざまに解釈して作り上げるのがパーソナル・ライフストーリーです

 

これら、第一、第二、第三のレベルの複合によって、個々の人生が出来ているわけです。

 そしてこの理論からすると、第一のレベルは変えることはできないもののようです。ここから得るべき事柄は、自身の特性の傾向を再確認するための“知識”であって、これを変えることに奮闘する意味はないようです。

つまり、人生を変えうる自由度、選択肢が存在するのは、第二のレベルと、第三のレベルにおいてのようです。

 

では、どのように人生を変えていくのか、具体的な例を挙げながらみていきます。

まず、第二のレベル「特徴的行動パターン」において、ある程度の選択肢が存在します。

たとえば、それまでオートバイを乗り回していた外向性のスコアが高い人は、理性によってそれが危険すぎると判断し、かわりに別の(刺激的だがそれほど危険ではない)楽しみに移ることもできます。

どのパーソナリティー特徴でも、考えられる表出行動はきわめて多いです。

人々の基本的性向は、何らかの形で表面に現れる。だが私たちには、その現れ方を決めるための能力が少なからずあるのだ。

もしあなたにとって、自分のパーソナリティーが厄介と苦労の種になっているのならば、その特徴を表に出す際に、もっと破壊的ではないはけ口を見つける必要がある。

自分自身を変える必要はない。ただ、はけ口を変えるだけでよいのだ。

 

行動の表出は、自身の特徴に合わせて行うこともあれば、特徴に逆らって行うこともあります。

アルコール依存症プログラムをやっている人々は、酒を制限しない。完全に酒を絶つのだ。

二、三杯なら…というわけにはいかないのである。その理由は、これまでの自制のきかない飲酒癖が示しているように、彼らの誠実性の低さによる。

彼らはよく知っている、いったん飲み始めたら最後、自分のパーソナリティーはそれを止められない。だからこそ彼らは、そもそも飲み始める状況に自分を置かないのである。

以前の過度の飲酒は、彼らの低い誠実性パーソナリティーが「特性に合わせて」表出したためであった。今の完全な断酒は、同じパーソナリティーの「特性に逆らった」表出である。

どちらの行動も、いったん始めたら自分を抑えられないという同じパーソナリティーの反映なのである。

 例えば、一緒にいることで自分の最悪の部分が引き出されるようなある種の人々を避けるというのも、その一つです。

自分の気に入らないパーソナリティーの局面が出てくるような状況から、あえて離れることもできるし、ピアノの練習を終えるまでは外出するのを自分に禁ずることもできる。

あえて仕事を引き受けて、人々と会わざるをえない状況に自分を追い込むこともできる。

とはいえ、行動パターンを変えることによって自分のあり方を変えるというのは、容易なことではありません。

そのためには意識的(理性的)に、
心の深いところにある極めて強力な無意識のメカニズムと衝動をくつがえす必要さえあるのです。(意識と無意識の関係についてはこちら→『ヒトには三つの脳がある』)

これは骨の折れる、また、熟慮を要する作業であり、しかも成功の保証はまったくない。

行動パターンによっては、簡単に変えたり避けたりできるものもあるが、どうしようもないほど変えるのが難しいパターンもある。

それにもかかわらず、自分たちの性向を「特徴に合わせて」表出する方法を選ぶか、「特徴に逆らって」表出を作り出すのかの間で、私たちにはある程度の個人的自由を手にすることになる。

今の自分と、これからの自分を形成する上で。

 

そして、人生を形作る上で、はるかに大きな自由をもつのは、自分をどう見るか(第三のレベル「パーソナル・ライフストーリー」)という点です。

人生は、現実に起きた(起こした)事象だけで語られるわけではありません。人生とは、「現実に起きた事象」+「解釈」によって成り立っています。

そして先の例で挙げたように、お金が無いとしても、それをどう解釈するかには大きな自由があります。客観的に変えることが難しい場合でも、少なくとも、それについての考え方は変えることができるのです。

そのような再構成は、セラピーでも、またもちろん個人の成長においても、きわめて重要です。だたし、これも必ずしも簡単ではありません。

特に、高い神経質傾向は大きな制約となるでしょう。

この特性が高い人は、きわめて多くの悪いことを自分の身に引き寄せる傾向があるのですが(『悩む人~神経質傾向』参照)、 それより問題なのは、自分について肯定的なストーリーを語るのが難しいということです。

これは、客観的に見て彼らの人生が肯定的な要素を多く含んでいる場合でさえそうなのですから、それを克服するには大きな努力が必要になるでしょう。

 

 

ここまで説明してきたように、もしあなたが自分の人生、自分の思考癖に満足していないなら、とるべきステップはいくつかあります。

第一に、自分が成し遂げてきた事柄について、別のストーリーを語れるかということです。

もしあなたが家族の中で厄介者で、これまでずっと何事にも身を入れることがなかったとしたら、兄弟たちと比較して劣等感を感じているかもしれない。

だが、なぜそう考えるのか?なぜそれを、因習に媚びることなく、苦しいときの理想のままに、豊かで自発的な人生を送ってきた証拠だと考え、自分というものに価値を認めないのか。

私たちはすべて、自分のあるべき姿や理由について、役に立たない時代遅れの概念を引きずっている。だがそうした概念は、ときどき立ち止まって振り捨てなくてはならない。

したがって、第一のステップはストーリーの再構成ということになる。

ただし、物語を再構成するだけでは十分ではありません。

表出行動の中には、道徳的、法的、あるいは金銭的などの理由で、現実に悪いものがあるからです。

たとえば低い誠実性のせいで、賭博で大金を失ったり、投獄されたり、あるいはあなたにとって大事な人間関係を失ったとしたらどうだろう。

これを学習経験としてプラスに再構成するというのは、やはり少々甘すぎるだろう。

あなたは行動を変える必要がある。

したがって第二のステップは、これまで追求してきた事柄に変わる、同じ誠実性でも別の、そしてもっとよい行動表出があるかを問うことであろう。

誠実性が低い人物は、起きている事柄にダイナミックに反応する能力があります。その特徴に合わせ、その性向を有効に使うために、臨機応変に働く頭脳を生かせる仕事もあるはずです。

それに加えて、自身の特徴に逆らった表出行動をする努力も必要でしょう。例えば毎朝決まった日課を自分に強制的に課すとか、トラブルが起こりそうな場所に行く事を自分に禁ずるとか。

 

できることは思った以上にたくさんあると、僕は感じます。

しかし読者の中で、特に自分のパーソナリティーに不満を感じ、生き方を変えていくことに対し大きなストレスを感じる人もいるでしょう。

その理由の多くは、神経質傾向が高いことにあるのではないでしょうか。

次回は、神経質傾向が高い人へのメッセージを紹介していきます。

 

→次の記事『特性5因子 ~自分らしく生きるということ(2/2)』へ(作成中。毎週土曜日更新です。)

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